たかがマスク、されどマスク

ハワイ州ホノルル市ロックダウン(都市封鎖)112日目:7月12日(日)
感染者数:1,220人*(前日比21人増) *データに調整が入りました。

アメリカは「自由」を大切にする国です。そんな国風が好きで、長く住んでいたはずですが、今回の新型コロナウイルス禍でアメリカという国そしてアメリカ人を見る目が少々変わったように思います。

新型コロナウイルス禍初期の頃は、アメリカ疾病予防管理センターでさえマスク着用の効果を認めていませんでした。が、4月にやっとマスク着用の効果を認め、着用を推奨してきました。今では、なんらかの形でマスク着用が義務付けられている州もたくさんあります。

ところが、どうしてもマスク着用が嫌な人びとがいるようで、その理由が「行政による選択の権利の略奪」とか「マスクを着用しない理由は、下着を着用しない理由と同じよ。通気が必要なのよ」と、まあめちゃくちゃです。トランプ大統領に至っては、「マスクは大統領や首相、独裁者、国王や女王には似つかわしくない」とまで言っています。

今まで、決してマスク姿をメディアの前に見せなかった大統領ですが、昨日軍関係の病院を訪問した際にマスクを着用し、各メディアがこぞって写真付きで報道しました。

今ではマスクは政治に利用され、共和党の政治家はこぞってマスク着用に反対、民主党の政治家は賛成しています。

マスク着用ってそんなものじゃなくって、人に迷惑をかけないために着用するもの。慣れれば車のシートベルトと同じことじゃないのかな。

ハワイ州ホノルル市ロックダウン(都市封鎖)72日目:Blackout Tuesday

都市封鎖72日目:6月2日(火) 感染者数:653人(前日比1人増)

先週の月曜日に、ミネソタ州ミネアポリスでジョージ・フロイドさんが警察官に8分間以上も膝で首を押さえ付けられて拘束された際に死亡しました。フロイドさんはアフリカ系アメリカ人で、警察官は白人。拘束の様子を携帯電話で撮影したビデオがソーシャルメディアや全米テレビ局のニュース番組で流れました。

その後、一挙に米国各地に人種差別の抗議運動が広まりました。抗議活動が過激化して暴動や略奪が起こった地域もあります。

そんな中、抗議運動に賛同した2人の女性が「Blackout Tuesday」を考案し、音楽業界に「今日は、仕事の手を休めて、人種差別の影響、社会における人種差別現象をしっかり見据えて考えてみましょう」と提案。そして、このムーブメントは音楽業界だけにとどまらず、さまざまな業界の著名人や有名人そして多くの一般の人が、ソーシャルメディアに真っ黒の画像だけを掲出して意思表示をしました。

私も、フロイドさんが苦しむ姿を映し出したビデオをテレビのニュースで見ました。映画やテレビ番組ではなく、実際に人が亡くなる、と言うよりは殺される様子が、2020年のアメリカで起こっていることとは思えませんでした。

単一民族の日本を出てから、どこに住んでもマイノリティーで、私もそれなりに差別も受けてきました。が、アフリカから奴隷として連れてこられた人びとを祖先とするアフリカ系アメリカ人に対する人種差別は、私が受けてきた差別とは全く違うものです。

よくアメリカは「人種のるつぼ」と呼ばれるます。元来、「るつぼ」と言うのは、「種々のものが混じり合っている状態や場所」と言う意味です。本当に「るつぼ」なら、憎しみあったり、歪みあって差別することなく、完全に混じり合って統一され、何が混じっているかもわからないはずです。

人種差別はアメリカの醜悪な部分です。人間の尊い命を犠牲にした今回の事件に対する抗議運動は、何か大きなうねりの丹緒ではないかと思います。そのうねりが何であるのかは、今の私にはわかりません。

ハワイ州ホノルル市ロックダウン(都市封鎖)50日目:政治と生活と新型コロナウイルス

都市封鎖50日目:5月11日(月) 感染者数:634人(前日比2人増) 

私はアメリカの選挙権を保持していませんが、ニュースを見たり、政治の追っかけをするのが大好きです。政治というとイデオロギーの世界の話で、あまり現実味が内容な気もしますが、新型コロナウイルス禍の今、合衆国や州政府が決めることは、生活に直結しています。

ハワイでは、州政府の指示でレストランやショッピングモールが閉鎖となり、州外から入ってくる人には14日間の自己隔離が義務となりました。そして、合衆国や州政府からの個人や中小企業向けの援助もあります。今は、ほぼ閉鎖状態となっている国や州をどのようにオープンしていくかの施策を政府が検討しています。そして、こういったことは毎日のように開かれる記者会見で発表があります。テレビ局のバイアスがかかっていないライブの記者会見を見て、自分で判断を下していくことが大切になります。

今のような非常事態には、政治と生活の結びつきをひしひしと感じます。そして、どの政治家がどのような考えで、どのように問題を対処するかもよく見えてきます。記者会見での質疑応答の態度を見ていると、その人の性格まで見えてくるような気がします。

2020年のアメリカは、大統領の選挙がある4年に一度の大きな選挙年です。この新型コロナウイルス禍に対する各政治家の手腕が正当に評価される選挙になることを願っています。

ハワイ州ホノルル市ロックダウン(都市封鎖)45日目:アメリカの健康保険制度

都市封鎖45日目:5月6日(水) 感染者数:626人(前日比1人増)

日本の健康保険制度は素晴らしいと思います。現在の制度では、すべての国民がなんらかの公的医療保険に加入している「国民皆保険制度」となっています。年金との紐付けが面倒だったり、いろいろなご意見もあるとは思いますが、金額も決してメチャクチャに高いものではありません。

自由意志を尊重するアメリカでは、国家が国民に健康保険加入を強制することはできないので、健康保険への加入は任意となります。ハワイ州の健康保険制度は「州民皆保険制度」とまではいきませんが、健康保険加入率は、アメリカの中でもかなり高い方です。週に20時間以上働く従業員に対しては、雇用者が健康保険を提供することが義務付けられています。雇用者は保険料の従業員負担割合を決めることがますが、その上限額も法律で決められています。

低所得者向けにはメディケアやクエストといった制度もありますが、扶養家族がいなかったり、そこそこの収入があると加入できません。

会社に所属せずに、個人で事業をしている人は、収入にもよりますが、政府から援助を受けることができるオバマケアを利用することができます。この制度は、その名の通り、前オバマ大統領が制定したものです。

ただ、どの保険も加入条件を満たしてから1ヶ月間は待機期間となっていたり、加入時期が決まっていたりするので、すぐに保険を利用することはできません。今回の新型コロナウイルス禍では、オバマケアは特別に加入時期でなくても加入できるようになっていました。

アメリカの健康保険料は、給付内容によっても違いますが、大体毎月$500〜$900程度のようです。これは、もちろん一人分の金額です。家族がいるとさらに増えます。まあ、毎月これだけの金額を払うとなると、家計に響きますよね。

今回、私は諸事情により、4月は健康保険がなく、5月はオバマケアを利用、6月からは雇用者が提供する健康保険を利用することになりました。4月に予定していた定期検診を5月に延ばし、オバマケアでは給付内容とならない検査をどうするかを主治医と相談しました。結局、お金と健康を引き換えにすることはできないとの判断で、検査費用は自己負担することになりました。同じくオバマケアでは給付内容とならない常用薬は、主治医からサンプルをもらって、なんとか6月までもちこたえることができそうです。

若い頃に日本からアメリカに渡って長年働いた人も、老後は日本に帰る人が大勢います。その一番の理由は、充実した日本の健康保険制度です。それほどアメリカの健康保険状況は非常に悪いのですが、まさか自分が、自分の健康を取るか、節約を取るかという判断をしなければいけない日がくるとは夢にも思いませんでした。私の場合、持病や常用薬と言っても、すぐに生死に関わるほどではないですし、検査費用もなんとか捻出できそうな金額で済みそうです。でも、アメリカには、健康保険がなくて膨大な医療費を支払うことをできないので、病院に行くことを躊躇している人がたくさんいるのかと思うと、自由意志の尊重と人間の生死はどちらが大切なのかと考えてしまいます。

ハワイ州ホノルル市ロックダウン(都市封鎖)24日目:アメリカの現金給付

都市封鎖24日目:4月15日(水) 感染者数:530人(前日比13人増)

先月末にアメリカ史上最大規模の景気刺激策が可決しました。この景気刺激策には、航空業界など新型コロナウイルス拡大で打撃を受けている業界への融資、中小企業への返済不要の貸し付け、自営業やフリーランスの人への失業給付拡大などの他に、年収7万5千ドル(約825万円)以下などの一定条件の下、大人1人に最大1200ドル、子供1人につき500ドルを直接現金給付することが含まれています。

確定申告の用紙に銀行口座を明記している人とそうでない人、2019年の確定申告を既に済ませた人とそうでない人など、いろいろと優先順位はあるようですが、第一弾の給付は予定通り本日から始まり、各人の銀行口座に給付金が振り込まれています。議会での可決から約2週間で該当する国民への現金支給を可能にできるというのは、アメリカの底力を見たような気がしました。

こんなスピード現金給付が実現したのは、アメリカの全員背番号制があってのことです。この背番号は、9桁の数字でソーシャル・セキュリティ・ナンバー(社会保障番号)と呼ばれています。この制度は1936年にニューディール政策の社会保障プログラムの一環として始まり、アメリカの社会保障制度が変更になった後も、身分証明番号として、納税の際や銀行口座開設、そのほかにも学校入学等さまざまな場面で使用されています。アメリカで暮らすには必要不可欠な番号と言えます。戸籍や住民票の代わりにもなる日本のマイナンバー制度とはちょっと違うかもしれませんが、納税の際に使用するという共通点があります。

この1200ドルの現金給付の使い道は生活費や家賃、家のローンに当てられることが多いようで、「景気刺激」と呼ぶのはいかがなものかという意見もあります。確かに、経済はほぼ全面ストップし、失業者が急増する中、この政策がどこまで景気回復の助けになるのかは疑問ですね。